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ジュエリーも子育ても

『家庭と仕事に線を引く』とか、『優先順位を付けるとか』そういうことは良く聞いたり、読んだりするけど、実際どういう事なんかよくわかりません。実は、最近行き詰まってるかんじがして、エネルギーが湧いて来ないのです…。きっとこの辺りにヒントが隠されてる気がしてます。ジュエリー作りも子育ても片方だけが巧く行くということは決して無いんだな…。皆さん、どう思う?
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『St Eloiの日』

アトリエ6 ~信心と親睦はレストランで試される。

ビジューティエ、ジョワリエのお祭りの日はサンテロワ。アトリエでは揃ってレストランでこの日をお祝いし、ビジューの学校でも出身生達が集まってパーティーをする。

フランスでは各日ごとに聖人が決まっており、St Eloiもそのうちの一人。彼はビジューに携わる者達の守り神なので、私達にとっては特別な聖人というわけ。これは国の第一宗教であるカトリックの決まり事で、ビジュー産業がフランスの伝統文化であることを証明している。こういう日があると、自分の職業をあらためて誇りに感じ、お祝いに参加できることをうれしく思う事が出来る。
また所変わると日本でも、お火焚き祭りが神社で催され、鍛冶屋さんを初めとするふいごを使う職業のための神聖な日がある。ちなみにふいごは火に空気を供給送るために使い、ビジューの制作にも必要不可欠な道具。

職業の日のお祝いと聞けば、仲間意識を深め、大皿料理を分け合って食事を楽しむ。そんなイメージがあるがここはフランス、各自自分のお皿を注文する。アペリティフ、前菜、メイン、デザート、コーヒー。アペロは既にアトリエでポンとやったので省略。メニュー選びは皆真剣、ギュと集中して美味しそうなのを選ばないといけない。「あれも良さそうだけどこれも悪くない、ところであなた達もう選んだ?」「メインは決めたけど、デザートが決められない!」お腹の隙具合とメインとの相性も考慮して、締めのデザートを選ぶまで気が抜けない。

注文が済むとすぐにおしゃべりの開始。St-Eloi、聖人エロワの日、いやおうでも話題は私の宗教観へと。アトリエではいかにもアジア人の私以外は皆、普通のフランス人。ちなみに宗教と政治の話題は祝いの席でタブーとされている。もめ事の原因を作らない配慮から来るのだが、それだけ実際日常生活の中で、デリケートな問題に遭遇することも多く感心が高い。フランスは移民大国なのだ。そんな中でまた私も移民の一人で外国人パリジャンヌ。
そこでたいていこんなふう質問される、「何の宗教を信仰しているんだい?やっぱり、仏教?それとも神道?。初めて聞かれた時はびっくりした。まず、どこかの宗教に属していることが前提になって話されていること。それに宗教観を聞くかわいいパリジャンヌなんて想像していなかった。
こんな時、私は「いただきます」という言葉を紹介して、感謝の心が哲学としてあって、宗教は私の生活を制限し管理することがないことから説明してみる。食べてはいけない特定の肉や期間などが日常習慣にない事も付け加える。

ところで、移民同士が信仰の違いから揉めるのを目撃したことがある。パスポートに所属宗教名が明記されている国の男の子が結婚観を語り始めると、その彼が使う一単語ごとにプロテスタンでフェミニストの彼女が不快感を露に激怒していく。周りに居合わせた者には何が彼女を刺激しているのか解るのだが、彼の方は解っているのか解らぬのか、微妙な態度で何とか説明しようと試みる。するとまた彼女が反応する。んー面白がっては不謹慎なのだけど無視できないやりとりであった。

またある時は語学学校で、かんじのいいスペイン人で敬虔なカトリックの若い男の子に宗教観の説明を求められ、「日本には神様が一杯いるのよ、それもそこら中に!」と言ってみた。案の定えらく驚いてショックを隠せない様子だった。あまりにも思う壷の反応にこちらも驚いた。全てに神性を見ると、まず説明すれば彼にも受け入れ安かったのだろうけど、ちょっと意地悪をしてみたくなったのだ。「貧乏の神様もいるし、お鍋に宿る神様だっているのよ!」と続けようかと思っていたが止めといた。とあえずはもう十分だろう。

そうこうしているうちに宴も大詰めを迎えた模様、悩んだ末に決めたデザートのお味はいかに。たとえいいかんじのレストランで美味しい食事をしても、デザートが今ひとつだと、とたんに皆のレストラン評がぐっと下がってしまう。おいしい料理に、お酒も少し入って会話がはずみ、盛り上げておいて、最後に尻つぼみだといけない。
そういえば、religieuxse、ホリジューズ、ルリジューズかな?なんて名前の大小のシュークリームを2重に重ねたとびきりかわいいお菓子がある。名前は訳すと修道女の意味になる。菓子の名前に思わず身構える。ネーミングのインパクトも然ることながら、ボリュームたっぷりなので心して頂きたい。

ああ、そういえばアトリエで忘れてはいけない聖人がもう一人いらっしゃいました。St-Antoine、サンアントワンは無くし物をした時に頼りになる聖人。お願いすると、見つけるのを助けてくれる。ほんの小さなパーツが無くなると見つけるのは簡単でないし、アトリエでは良くあるアクシデントだ。そんな時は彼の出番。「アントワン聖人、お願い!あれは結構時間が掛かったの、やり直すのは絶対に嫌!」
あれ?ちょっと待て。カトリックは一神教だと言うけど、これじゃあ結局日本人の一般的な感覚と変わらないじゃないか!だって、交通安全にはこの聖人、商売にはこの聖人、とあってそれぞれにお願いするんだ。まったく日本と同じやり方で何も違わない。ただ彼らを神とカトリックが呼ばせないだけで、神は格差社会のシェフなんだ。一神教かそうでないかなんて、本音と建前を分けられるフランス人にはどうでもいい事だろうし、いろんなスタイルを取り入れられる日本人にとっても、結局自分のいいように統合してしまえばいいことで。もっとも、スペイン人のまじめな青年にとっては大変な違いだっただろうが。

何はともあれ、私とアトリエの皆の間に、宗教的理由によるたいした垣根は無いようで、素晴らしい。ちょっと大袈裟か、いやそんなこともない。お手ても再度合わせまして、ごちそうさまでした。サンテロワ、そしてパトロン、おいしい食事をありがとう。来年もよろしくね。ああコーヒーは結構です。

プチフランス語講座:religion(宗教)
          St Eloi[サンテロワ](聖人エロワ)
          patron[パトロン](経営者、雇用者、etc)

『シャンパーニュのある時』

アトリエ5 ~luxと共に生きる

ポンっとどこかでコルクの栓が抜かれる音がしたら、作業机をきれいにする時間かもしれない。散乱する工具を隅によせて、真っ黒、時に真っ白に汚れている机の上を気持ち拭く。そうしたらミニパーティーのはじまりだ。グラスにシュワーッと泡立つシャンパーニュが注がれる。特別なお祝い事がなくてもシャンパーニュでアペロタイム、昼食前に軽く一杯やる。生ハムやチーズ、パンを用意すれば皆で軽く昼食会に、おやつの時間はお菓子のお伴に、喉が乾く夏は帰宅前に。

仕事中に飲むの?大丈夫?なんて言われそうだけれど、誰も一杯くらいじゃ酔わないから。それに私の同僚女子マリーに拠れば、「シャンパーニュで機嫌がよくなったって酔った事にならない」らしいし、「ワインやビールとは別物」とのこと。そうか、ならいいや。パリジャンヌがそう言っているんだ。それに実際、そのせいで失敗をやらかしたことはないな。仕事の失敗は大抵メンタルなものか単純な技術不足だ。

メンタルが仕事に与える影響はいかに。で、ふと思い出したのだが、日本に居る頃ある実験をしたことがある。その当時私は日本の伝統的な彫金技術を使ったオリジナルジュエリーを作りつつ、和彫りを帯留や蓋置き、純銀製鍛造品に施す仕事をしていた。彫りを施す前はあまりの緊張に胃だけでなく膀胱まで縮まる気持ちなる。一旦彫りだすと無心になれるのだが、この問題をなんとか出来ないかと考えた末に一度、少しだけビールを飲んで仕事をしてみた。少し酔うとリラックスしてかえって良いのではと思ったからだ。
結果、なるほど緊張は和らいだ。そして彫り損ないも無い。ある意味実験は成功。でも彫りがどこかつまらないかんじになってしまったのだ。洋彫りが全体に均一で柔らかな印象をもたらすのに対して、和彫りの魅力は彫りの勢い。緊張感に全体が支えられるかのような印象になる。書のように一度で彫りきるのが好ましいため、瞬間瞬間が勝負。微妙な事だが、線が生きた表情をし、彫り手独特の感覚が反映されていないと面白くない。そんな彫りをしたい。
じゃあダメじゃない!という声が聞こえてきそうだ。そう、だめだ。だめだめだ。和彫りとアルコールはどうも相性が良くないようで、あくまで私の場合だが。これ以来、彫りの前に感じるひどい緊張をも歓迎する心持ちになった。ああ、そういえば、シャンパーニュでなくビールだったのも悪かったのだろう。

酔拳なんていうのもあるらしいが、ビジューティエでこの拳の使い手にはまだお会いしたことがない。力みは消え去り、飲めば飲む程強くなる。力み、つまりあらゆるプレッシャーをコントロールし、飲めば飲む程、仕事が早く美しくなる。
石留めのニコラは私を見るとアチョーとやってくれる。フランスでは空手が盛んで彼も少しは知っているようだけど、彼の仕草はむしろ中国式拳法だ。虎になったり、かまきりになったり、こうやってふざけて仕事の疲れや締め切りのストレスを逃がすのだ。これはまさにプレッシャーをコントロールすることじゃないか。短い双眼鏡のような眼鏡をかけて小さい宝石を一切の隙間無く、彼曰く ”ツッシュツッシュ!”、石の端をピッタリ隣わせて石留めする。細かい細かい石留めの仕事の合間にはこういったばかばかしいことが必要なんだろう。私も鶴になって応戦する。手にはシャンパーニュがあったり無かったり。

ビジューティエの仕事は正確で細やかな仕事の積み重ねを要求される。失敗に失敗を繰り返したあげく、小さなパーツを床に落として見つからなかったりすると泣きたくなる。安定した質の高い仕事には一生勉強が欠かせない。巧く行かないからと言ってあまりに自分を攻めるのは止めよう。
また自分の仕事をきちんとしたとしても、何かが掛け違うと最後の最後までそれに足を取られるような羽目に合う。デザイナーのアイデアが変更に次ぐ変更で定まらなかったり、メタルや石の素材に問題が起こったり。石留めやさん、磨きやさんなど次のステップで失敗があったり。お客様メゾンの政治的な理由でプロジェクトが頓挫するということさえある。
それら失敗や問題、全てがアトリエの、そして個人の収入に関わって来る。自分のせいでもそうでなくても、そうやって何度も繰り返し問題が持ち上がると頭に血が上ってどうしようも無くなる時がある。そんな時に例のポンを聞くと待ってましたとなる。

ところでシャンパーニュのポンはワインやリキュールの栓を抜く音よりボリュームアップした音で、耳が知っている。いつもボリュームの有る方のポンなのでたまにかわいいポンを聞くとかえって期待が高まる。「またシャンパーニュか」なんて偉そうか。でもシャンパーニュはイメージ戦略に成功しているだけでそんなに有り難がる必要も無かろうと思うのだ。
アトリエには大きなジュエリーメゾンのお偉方や、おしゃれな方々も訪れるのでシャンパーニュの出番も自然に多くなる。シャンパーニュが他のスパークリングワインと段違いに高価なように、彼らとは給料は桁違いだろうが、仕事の質の高さに桁が違う程の違いがあるのだろうか。

あまりに仕事の状況が厳しいと「もういいよ」なんて思うものだ。そんな時は泡の踊るシャンパーニュでも飲んで気持ちを落ち着けたい。美しいジュエリーに囲まれて、良い質の仕事をする、そんな喜びの方へ意識を向けろ。アトリエが制作するのは、ビジューティエが一生涯通しても自分では買えない額のジュエリー達がほとんど。”この指輪買うなら田舎に家買います” の世界。そんなジュエリーをけっして低くないストレスと決して高くない給料で日々つくる。華やかなジュエリーだけど確実に積み上げられた技術とたくさんの理不尽な犠牲の上に成り立っている。そんな事実が迫ってきて物思う時はシャンパーニュが相応しい。ポンッ、シュワッ。

プチフランス語講座:champange[シャンパーニュ](シャンパーニュ地方で作る発泡ワイン酒)
          apéro[アペロ](食前酒apéritifの略)
          lux{リュックス](贅沢、豪華)

『クロワッサンの有る時』

アトリエ4 ~繰り返えす日々、四季は巡り

アトリエでは美味しいものを皆でたべるのが好き。誰かが気が向くと、フラリとパンやチョコレートを買って来て皆に振る舞う習慣がある。人気パティシエのマカロン、自宅で焼いたタルトやパイ、旅のお土産の地方菓子…私はアトリエで仕事をしつつフランスのお菓子に親しんでいった。

朝はクロワッサン等のビエノワズリ。又はシューケット。ビエノワズリはパイ生地のパンで主に朝食に頂く。シューケットはシュークリームの皮だけ、クリームが入っていないお菓子でミニサイズ。ツブツブの砂糖がまぶしてあって、それがキャラメリゼしてカリカリするタイプが私は好き。誰かが差し入れしたのを見つけると、早速温かい紅茶と一緒につまむ。朝一でまだ作業する気になれない時は特にありがたい。つまり、仕事場で最初にすることは食べることか、のんびりしている。でもこの後しっかり集中するから良いのだ、朝はゆっくりはじまる。

午後になって今度は逆、必死になって作業しているのに「さあ!」みたいなかんじで即されると抗えないのがおやつの時間。作業机から引き剥がされる。フランスにも時節のお菓子があり、皆で楽しむのになんとも相応しい。1月はガレットドロワ、アーモンドパイ、2月はクレープ、4月はチョコレート。菓子で何かをお祝いしているのだけどもフランス人でも詳しく知らないことが多い。由来云々より、ポイントは季節が巡るのをお菓子で感じる事なわけだ。少しホッコリしたらエンジン全開、さらにスピードアップ!

季節のお菓子というと、本当の主役はフルーツ。果物が豊富に出回りはじめるとバカンスシーズンの到来。バカンスとは長期休暇の意味で、6月~9月はパリからパリジャン達が消える。ビジュー業界も関係者一同、一斉に仕事は一旦横に。アトリエも完全閉鎖でお休み。その期間、なんと丸一ヶ月!「やれることはやった。後は知らない。良いバカンスを!」

フルーツたっぷりの菓子を求めてパリを脱出。しかし何と言っても菓子は地方に軍パイがあがります、パイだけに!…なんて。旦那様パトリックの故郷はフランスアルザス地方、7月頃になると山は野生のブルーベリーだらけになる。自分で穫りに行ってそれをタルト生地の上にざらっとあけて、砂糖をかけずに焼く。これが最高においし~い。しかしこのタルト、美味しいからと言って秘密にこっそり食べたりできない。なぜなら、舌に濃いブルーの跡をしっかり残すから。さて、ここで一句。

~アトリエに お目見えもせず 我が舌を 青く青くと 染めるばかりか

手作りの差し入れはポイントが高い。美味しいしかんじもいい。アブリコのタルトにレモンケーキ、フォンドンショコラ、サクランボのクラフティーなどなど。同じ種類のお菓子でも作る人によって味が違うのも面白い。手作りのケーキがあるとテーブルの上にナイフと伴に置かれるので好きな時に「誰がつくったの?メルシー」などと言って、皆めいめいに小鳥がパンをついばむように取って行く。
ところでケーキを置いてるのは、テーブルといっても実は線引きという道具の上だったりする。ビジューティエは欲しいサイズの径の線金をそのつど作って使う。この道具が幅20センチ、長さ180センチ程の長細いテーブル状でアトリエの真ん中にデーンと居座っている。年期の入ったかんじは渋い木製カウンターといったとこ。道具として使いたい時は文句を言わずにケーキを退かすまで。

時の経つのは早いもう12月。クリスマスイルミネーションで街は賑わいを増す。この時期人気パティシエは長蛇の列。皆マカロンを買う。人を何だかウキウキと、華やかな気分にさせる魔法を買うのだ。アトリエでもマカロンを頂く。彩り豊か、お味は洗練されて複雑。時には必ずしも美味しいとは言えない実験的なものもあるけれど、味覚を探り、そして皆でアレコレ言うのがいい。でも間違っても値段の割にたいした事ないとか言うのはナシ。確かに少々値ははるがこの魔法には、かかっておくに限るのだ。なぜなら、パリの冬は辛い。いい加減疲れた時は締め切りでも無い限り、締め切りでも無い限りスローダウンして次のバカンスまで持ちこたえたい。甘いお菓子も我らを助けてくれるはず。

おっと、そろそろ帰宅の時間ですね!またしても、作業の切りが良くないです。でも、さっさと締めて続きは明日にしときましょう。

プチフランス語講座:pâtissier [パティシエ](ケーキ屋、ケーキを作る人)
          tarte aux abricots [タルト オ アブリコ](アプリコットタルト)
          chocolat fondant [ショコラ フォンドン](中がトロリのチョコケーキ)
          clafoutis aux cerises [クラフティー オ スリーズ ](プリンのような桜坊のケーキ)
          macaron [マカロン](アーモンドを使った2枚の生地にクリーム等を挟んだ菓子)          

『ビズとかけてジダンと解く』

アトリエ3 ~attention au coup de boule!

朝、アトリエに来ると目にするのがビズ。おはようのあいさつだ、これは欠かせない。ビズは頬と頬を交差に重ねてキスをするかしないかのかんじで ”チュッ、チュッ”と音を発ててやる。ビズは生活の中に溢れていて、仕事の仲間や、ボスや、友達や、家族や、親戚間でも頻繁にビズをする。おはよう、こんにちは、久しぶり、さようなら、お休みなさい。そして、おめでとう、ありがとう。親しみを込めたあいさつだ。異性間では自然に行われるし、同性間でも有りだけれども男性同士の場合、握手に振り返られることも多い。

ビズで大変なのは、そこに居合わせた人数が多く、さらに久しぶりに皆が一同するような席。皆が一周りチュッチュッとするにも単純に時間がかかる。もちろんビズにはおしゃべりが伴う。特においとましましょうとなってからが長い。帰る間際になってるのに、誰かが新たな話題で話し始め、やっと終わったかと思いきやまだビズが一周りしてなくて、次の話題が始まって…終わらない。帰れないんじゃないかと思ってしまうくらい長い。フランス人の立ち話の長話好き、これにはビズの習慣が多いに関与しているに違いない。

さて、アトリエには素敵なお客様の他に、石留め屋さんや、彫り師さん、モデリストさんといた仕事関係者が多く出入りする。彼らもアトリエへ来ると皆にビズで挨拶して回る。ビジュー制作に携わる仲間として、一気に距離間が縮まる気がする。
ところで、アトリエの間取りを俯瞰してみると作業机が環状態になって並べられている。フロアを完全に二つに隔てない分厚い壁が中央にあり、この壁沿いに作業机がぐるりと沿って並ぶ。
アトリエの皆にビズで挨拶して回るとは、文字通りアトリエをぐるりと一周することになる。”ボンジュール、サバー” チュッ、チュッ。
石留めのロロンは恰幅の良いムッシュー。彼もアトリエを一周皆にビズして回るのだけど、その時私は思わず想像する。アトリエは薄暗い水族館、おおきな楕円形の水槽になる…彼の黒っぽい服装とゆったりした雰囲気、それに加えてギョロリと大きな丸い目は水族館にみる魚の静謐な姿も連想させる。実際、彼自身がそう言うのだから仕方ない。ひとしきり長話がすむと”さて、回遊してくるか”と言って水槽の反対側へ消える。

もうひとつ忘れてはいけない話がある。アトリエで私は、毎朝フランス式にビズと日本式に挨拶をする。文化交流というわけだ。まず、フランスでは朝も昼もボンジュール一本だけど、日本では「おはようございます」と「こんにちは」を時間帯で使い分ける事を説明した。その結果、遅くアトリエへ着いた時などに「おはよう」と言うと「もうこんにちはの時間だ」とやられることになってしまった。でも面白いから良しとしよう。また、「こんにちは」の挨拶と共に手を合わせられたので、日本ではこのようにやるのだと、頭を下げてみせた。この時「こんにちは~さん」と相手の名前を付け足したのが良くなかったのか、うまくタイミングが合わないで頭がぶつかってしまった。折しも時はサッカーの世界大会決勝戦で、フランス代表のジダンがまさかの頭突きでレッドカードをくらったばっかりだった。ちなみに、フランス語で頭突きをクッドブールと言う。このクッドは一撃というかんじ、ビジュー制作時にもクッドゴムというように使う。ゴムを少し使う、でも効果的と言う意味だ。それ以来アトリエでの日本式挨拶は「こんにちは」、ペコリとおじぎして、そして「注意して!クッドブール!」に落ち着いた。そう、もちろん頭突きする。色気なし。でもやっぱり面白いから良しとしよう!

”ボンジュ~ル!ビズ” そして、「こんにちはー!クッドブール!」

プチフランス語講座:bonjour ça va? [ボンジュール、サバ?](こんにちは、元気ですか?)
          attention à~ [アトンシオン](~に注意する)
          le coup de boule [クッドブール](頭突き)

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